交通事故の状況は多彩なもので、加害者は必ずしも免許を取っているとは限りません。
人によっては、無免許の状態で車を運転している事もあるのです。しかも無免許の運転手が操縦している車と、衝突してしまう事故もあります。相手に免許が無いとなると、少々焦ってしまう事もあるでしょう。
しかし免許が無いと言っても、被害者には肝心の慰謝料が支払われるケースは多々あるのです。保険に加入済みなら、支払いは可能です。
無免許運転による交通事故の傾向とその初期対応
無免許運転とその傾向
無免許運転は、ここ10年ぐらいの件数自体は減ってきています。件数は、大体半分ぐらいになりました。しかし絶対件数は今なお多く、平成28年の時点で22,700件前後になっています。
また免許を持っていない運転手の場合は、事故は少々深刻になる傾向があります。全体的に、重大事故が多いのです。
その重大事故は、年齢との相関関係もあります。そもそも無免許運転している人物の年齢も多彩で、未成年者が車を運転している事もあれば、80代以上の運転手もいるのです。
年齢が低いもしくは高い人物が運転している車は、大事故になりやすい傾向はあります。
無免許運転する人物のモラルの低さ
また無免許運転している人物は、モラルが良くないという指摘もあります。
具体的には、下記のような事例が散見されているからです。
- ひき逃げ
- 飲酒運転
- 負傷した人物を救護しない
全体的に、事故が発生してから重大さを実感している人物が多いです。
相手が負傷してから事の重大さを自覚し、現場から逃げるような実例も目立ちます。もちろん逃走した本人が飲酒運転していれば、さらに罪は重たくなるでしょう。
そのような人物が運転する車は、事故を再度引き起こす可能性があります。ですから知人が無免許運転していた時などは、例えば物損事故でも直ちに警察に連絡すべきです。そうでないと、また深刻な事故が生じる可能性があります。
無免許運転の人物による交通事故が発生した時の初期対応
では無免許運転していた人物による交通事故の被害者になった時は、どのように対処すれば良いかと言うと、基本的には下記のような流れになります。
- 事故の状況確認と警察への連絡
- 負傷者がいるなら救急車も呼ぶ
- 相手の連絡先などを聴取して逃走を防ぐ
- 警察が到着したら人身事故として処理してもらう
- 事故に関して思い出すよう努める
- 目撃者を確保して連絡先を聴取
上記の流れは、通常の交通事故とほぼ同じです。
相手が逃げる可能性もあるので、連絡先は聴取しておくべきですが、頑なに拒んでくる時には無理すべきではありません。相手とのトラブルもあり得るからです。
なお事故に関する情報は、多いほど有利です。下記のような情報を、可能な限り確認しておく方が良いでしょう。
- 相手の住所や氏名などの情報
- 相手が加入している保険会社
- 車のどの部分が損傷しているか
ただし手書きのメモですと、記録するのに時間がかかってしまう事も多いです。
スマホのカメラでも良いので、できるだけ証拠を残しておきましょう。
無免許運転の種類と罰則
色々な無免許運転の種類
ところで無免許運転と言っても、下記のように色々な種類があるのです。
- 純無免許
- 取り消し無免許
- 免許外
まず1つ目の純無免許とは、要するに年齢などの資格が無い状態です。未成年者が運転していれば、純無免許と見なされます。
2つ目は、過去の交通違反で取り消しになっていたにもかかわらず、運転していた状態です。白バイに切符を切られて取り消しになっていたのに、運転している人物も稀にいるのです。
そして3つ目は、本来運転すべきでない車を操縦していたパターンです。オートマチック限定の免許なのに、ミッション車などを運転していると、免許外であると見なされます。
無免許運転していた時の加害者の罰則はどうなるか
では無免許運転していた加害者にはどのような罰則が下りるかと言うと、下記のようなケースがあります。
- 10年以下の懲役
- 15年以下の懲役
- 3年以下の懲役か、50万円以下の罰金
過失運転致死傷罪に該当する時は「7年以下の懲役や禁固刑か、100万円以下の罰金」のような刑罰が下る可能性がありますが、それに無免許が加わると1つ目の10年以下の懲役になるケースがあります。
純無免許運転の場合、相手を負傷もしくは死亡させてしまった時は、「1年以上の有期懲役」のような刑罰になる可能性があります。その上無免許運転ですと、上記2つ目のような刑罰になる事もあるのです。
なお無免許運転のみの場合、上記3つ目の刑罰になる可能性があります。
無免許運転の同乗者に対する罰則
同乗者にも罰則はあります。
例えば運転手が無免許である事を知りつつ同乗した時には、2年以下の懲役か30万円以下の罰金になる見込みがあるのです。
また無免許である事を知りながら、その人物に車両を提供していた時には、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金になる可能性があります。
ちなみに加害者は、その同乗者に損害賠償を請求するケースもあるのです。もしも同乗者に過失がありそうな時は、弁護士に相談してみると良いでしょう。
無免許運転に対する保険適用と弁護士相談のメリット
無免許運転の加害者側には保険はおりるか
ところで多くの運転手は、任意保険には加入しています。自賠責だけでは足りない状況も考えられるので、万が一に備えて加入している方は多いです。
しかし無免許運転ですと、加害者に対しては保険がおりないケースが目立ちます。当然ですが、車を運転する為には免許は必要です。それが無い状態で運転していたとなると、過失が大きいと判断されますから、保険会社も支払ってくれません。
ちなみに保険会社は、同乗者にも支払ってくれないケースも多いです。特に「無免許運転である事は、よく知っていた」状態ですと、やはり支払われない可能性が大です。なお無免許である事を知らない場合、若干事情が変わってくる事はあります。
無免許運転の被害者には保険はおりる
上述の通り、加害者に対しては保険は原則おりません。しかし被害者側は、話は別なのです。被害者を保護するのが筋という原則がありますから、慰謝料などは請求する事ができます。
ただ問題は、保険会社が提示してくる慰謝料の金額です。保険会社としても売上げ数字を追求していますから、安い慰謝料が提示される可能性はあります。相手が無免許であるにもかかわらず、慰謝料が安くなってしまうのは納得できない事もあるでしょう。
その場合、弁護士に相談してみるのがおすすめです。幸いにも交通事故に詳しい弁護士であれば、相手の保険会社との示談交渉も代行してくれます。ちなみに弁護士に相談すると、様々な証拠などを提示してくれるので、慰謝料も高くなりやすいです。
まとめ
無免許で運転していた人物による事故は、全体的に重たい状況になってしまうケースが多いです。ですが相手が無免許でも、焦る必要はありません。
加害者本人には保険がおりない事が多いですが、被害者に対しては慰謝料などが支払われるケースも多いからです。しかし加害者側の保険会社が提示する慰謝料は、必ずしも妥当な金額であるとは限りません。
やはり弁護士に相談して、後遺障害の手続きなどを進める方が良いでしょう。