交通事故で負傷してしまうと、働けなくなってしまう事があります。
ほぼ腕が動かないような状態になると、仕事も難しくなってしまうでしょう。それでは収入が入ってきませんから、被害者としては加害者に休業損害という形でお金を請求する事になります。
ただし状況によっては休業損害が支払われない事もありますから、注意が必要です。なお掲示される金額が妥当でないと思われる時は、弁護士に相談してみる方が良いでしょう。
休業損害が支払われるケースとその計算方法
休業損害が支払われないこともある
給料を受け取っている人物であれば、基本的には休業損害は支払われます。ですから会社員やアルバイトで働いている方は、お金は支払われるのです。自営業者も支払われますし、専業主婦にも支払われます。
逆に支払われないケースもあって、例えば家賃収入などでお金を受け取っていた方々です。
休業損害は、労働によって稼いでいるお金が対象になります。
家賃収入は不労所得であると見なされるので、たとえ事故で働けなくなったとしても、減収であるとは認められません。ですから無職の人物も、もちろん休業損害を請求する事はできません。
ただし就労予定の人物は、話は別です。すでに内定先が決まっていて、そこで働く事も確定していた時には、休業損害は支払われます。
休業損害の基礎収入の計算方法
では休業損害の金額の算出方法は、基礎収入に休んだ日数を掛け算します。例えば基礎収入が1日6,000円で、10日間休んだ時には60,000円支払われます。
ただし基礎収入の計算方法は、働き方によって異なります。そもそも働き方にも、下記のように複数あるでしょう。
- サラリーマン
- 自営業
- 主婦
サラリーマンの場合は、直近3ヶ月分の収入の平均値を基礎収入であると見なすのです。アルバイトも同様です。自営業者は、年収を基準に算出します。例えば年収500万円であれば、365日で割り算して約13,700円が基礎収入になります。
主婦の場合は、賃金センサスというデータを活用します。それで1年分の平均収入を確認し、365で割り算した数字が基礎収入になります。
なお自賠責基準では、基礎収入の最低金額は5,700円になりますが、弁護士基準では実収入を元に計算します。
休業損害の休業日数の注意点
休業日数は、やや注意が必要です。通院などは、必ずしも休業であると認められない事もあるからです。
例えば基礎収入は1日6,500円で、通院日数は20日だったとします。ですが20日の内の15日のみ認められ、5日間は休業とは認められない事もあるのです。その場合は支払い総額は97,500円であり、13万円ではありません。
認められる休業日数は、あくまでも「必要性がある休み」に限定されます。本来は行く必要もないのに、故意に通院していた時などは休業であるとは認められません。
休業日数を多くしたい時は、証拠を提示する必要があります。「医師の指示」によって休んでいた時は、その証拠が必要なのです。
サラリーマンに関する休業損害
サラリーマンの休業損害で気をつけるポイント
サラリーマンが休業損害を請求する時は、注意すべき点がいくつかあります。下記のような時は、注意すべきです。
- 有給を使った
- ボーナスが減った
- 昇進がなくなった
- 退職
1つ目ですが、実は有給で休んだ時にも休業損害のお金は請求できます。交通事故の怪我や症状で治療する時は、有給を使って問題ありません。
2つ目ですが、交通事故によってボーナスが減ってしまう事もあります。売り上げが減ってしまうと、ボーナスが減額される実例もありますが、実はボーナス減額分のお金も休業損害で請求できます。もちろん証拠を提示する必要があります。
3つ目の昇進も同様です。昇進すれば給料が高くなる事も多いですが、昇給分のお金も請求できます。
4つ目の退職ですが、交通事故の治療期間が長引いてしまうと、人によっては会社の退職を余儀なくされてしまう事もあります。それで解雇になった時でも、休業損害は請求できます。
基本的には退職日から症状固定の日数分を請求できます。ですから退職してから40日経過した時に症状固定になり、基礎収入が7,000円だった時は、32万円支払われるのです。
休業損害と労災の併用がおすすめ
労災には休業補償給付という制度があります。仕事上の交通事故であれば、会社は休んだ分の給料も支払ってくれるのです。
休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)が支給されます。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154476.html
労災による支払い額には上限があって、最大6割になります。さらに別途で休業特別支給金も2割分だけ支払われますから、労災なら最大8割は支払われるます。
このように勤務先から支払われるお金は、休業補償と呼ばれますが、休業損害は別扱いになります。
労災から休業補償を受け取ると、休業損害は減額されます。ただし減額の最大値も決まっており、決して併用して損をすることはありません。
休業損害から40%支払われる事になり、労災からは最大80%支払われるので、実質的には120%分支払われる形になります。ですから労災が使えるなら、それも併用する方がお得です。
休業損害に関する保険会社とのやり取りを弁護士に任せる
休業損害の提出先と必要書類
休業損害の提出先は、保険会社になります。源泉徴収票など所得が分かる書類を準備し、保険会社から休業損害証明書を取り寄せして、保険会社に郵送します。ただし専業主婦は源泉徴収票がありませんから、病院から発行された医療明細で問題ありません。
保険会社に提出した後に確認が行われ、指定のお金が支払われます。ただし請求したお金が支払われるのは、示談内容がまとまった後になります。
休業損害の交渉は弁護士に相談
1つ注意を要するのは、保険会社は休業損害のお金を渋ってくる事があります。
例えば専業主婦は働いていないので、休業損害は認めないと強気に主張してくる事もあれば、昇進分のお金は認めないと主張してくる事もあります。そのように言われると、被害者側としては困ってしまうでしょう。
このように保険会社が強気に出ることがあるので、請求前に弁護士に相談するのが一番です。強気に主張してくる保険会社と示談交渉するハードルは、とても高いです。自力で示談を行ってみても、不利な条件を飲まざるを得なくなる事が多々あります。弁護士に依頼すれば示談交渉を代行してくれますから、とても楽です。
また弁護士に依頼すれば、交通事故の対処法に関して色々サポートしてくれます。専門家のアドバイスを受けられるメリットは大きいでしょう。ただし、弁護士はある程度慎重に選ぶ方が望ましいです。できれば、交通事故が得意な弁護士に相談してみる方が良いでしょう。
まとめ
いずれにせよ交通事故で働けなくなったとしても、その分の収入は相手に請求できます。
不労所得者では少々難しいですが、専業主婦やアルバイトの方でも請求できるのです。基本的には、基礎収入に休んだ日数分だけ掛け算した金額を請求しますが、保険会社によっては請求内容を認めてくれない事があります。
その場合、やはり弁護士事務所に相談してみる方が無難です。交渉も代行してくれますし、検討してみると良いでしょう。