なぜ事故後に腰が痛むのか?主な原因

交通事故による強い衝撃は、体の様々な部位に影響を与えますが、特に腰(腰椎)は損傷を受けやすく、腰痛を引き起こす原因となります。

目次

筋肉・靭帯などの軟部組織の損傷

比較的軽微ながらも、頻繁に見られる損傷です。

腰椎捻挫(筋肉・靭帯の過伸展・断裂)

事故の衝撃で腰部の筋肉や靭帯が急激に伸ばされたり、部分的に断裂したりする状態です。むち打ち症が首で起こるように、同様のメカニズムが腰で発生したもので、「腰部捻挫」とも呼ばれます。

直接的な打撲による損傷

事故時に車の内装などに腰を直接ぶつけることで、打撲(打ち身)や皮下出血、筋肉の損傷などが起こり、局所的な痛みや腫れが生じます。

椎間板や神経への影響

腰痛だけでなく、足への症状を引き起こすこともあります。

椎間板ヘルニア(神経圧迫)

背骨の骨(椎骨)の間でクッションの役割を果たしている椎間板が、事故の強い力によって飛び出したり(突出)、破れたり(破裂)することがあります。この飛び出した椎間板が近くにある神経(脊髄神経根など)を圧迫すると、腰痛に加えて、お尻や足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛など)、脱力感を引き起こすことがあります。

脊柱管狭窄症(外傷による悪化・発症)

脊柱管(背骨の中にある神経の通り道)が狭くなる状態ですが、もともとあった狭窄が事故による外傷で悪化したり、事故が直接的な原因となって発症したりすることもあります。神経が圧迫されるため、歩行時などに腰痛や足のしびれが現れやすくなります。

骨や関節へのダメージ

より強い衝撃が加わった場合に起こりうる、比較的重い損傷です。

腰椎や骨盤の骨折

事故の衝撃力によって、腰椎(腰の骨)が潰れる圧迫骨折や、横に突き出た部分(横突起)が折れる横突起骨折、あるいは骨盤の骨が折れる骨盤骨折などが起こることがあります。これらは強い痛みを伴い、場合によっては神経損傷を引き起こす可能性もあります。特に骨粗しょう症などで骨が弱くなっている場合は、比較的軽い衝撃でも圧迫骨折を起こすことがあります。

仙腸関節の機能不全

背骨と骨盤をつなぐ仙腸関節に、事故の衝撃で急激な力が加わることで、関節や周囲の靭帯・筋肉が損傷し、機能不全(動きの悪さや不安定性)が生じ、腰痛の原因となることがあります。

その他の要因と注意点

上記以外にも、腰痛の原因や悪化に関わる要因があります。

関連痛や心理的ストレスの影響

体の他の部位の怪我の影響が腰痛として感じられる「関連痛」である可能性や、事故に伴う精神的なストレスやトラウマが腰痛を悪化させている可能性も考慮する必要があります。

症状の遅発性について

むち打ち症と同様に、事故直後はショックやアドレナリンの影響で痛みを感じにくく、数時間から数日、場合によっては数週間経ってから腰痛が現れることがあります。事故後すぐに痛みがなくても、注意深く自身の状態を観察し、痛みが出てきた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

腰痛の症状と重症度の見極め方

交通事故後の腰痛は、その現れ方や強さが人によって大きく異なります。

腰痛の現れ方:痛み・こわばり・神経症状

腰痛には様々なタイプがあります。

痛みの性質(鈍痛・鋭痛)と強さ

「ズキズキするような鈍い痛みが続く」「動いた時にギクッと鋭い痛みが走る」など、痛みの感じ方は様々です。痛みの強さも、軽い違和感程度から、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みまで幅があります。

腰のこわばりと動きにくさ

腰周りの筋肉が硬くなったような「こわばり感」や、「前かがみになれない」「体をひねると痛い」「長時間立っていられない」といった動きの制限(可動域制限)もよく見られる症状です。

しびれや脱力などの神経症状

お尻や足にしびれやピリピリ感がある、足に力が入りにくいといった症状は、椎間板ヘルニアなどによる神経の圧迫が疑われるサインであり、注意が必要です。

痛みの広がり:腰周辺か、足まで及ぶか

痛みを感じる範囲も重要な情報です。痛みが腰部に限定されている場合と、お尻や太もも、ふくらはぎ、足先まで痛みが広がっている(放散痛、坐骨神経痛など)場合があります。後者は神経の圧迫が示唆されることが多いです。

重症度の評価と急性・慢性の分類

腰痛の状態を正しく把握し、適切な治療方針を立てるために、重症度の評価や分類が行われます。

評価の指標(痛み、機能制限、神経所見)

重症度は、主に「痛みの強さ(VASスケールなど)」「日常生活動作(ADL)の制限度合い」「しびれや麻痺などの神経症状の有無や程度」などを総合的に評価して判断されます。

画像診断(レントゲン、MRIなど)の役割

骨折や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など、腰痛の原因となっている構造的な問題を特定するために、レントゲン(X線)検査、MRI検査、CT検査などの画像診断が重要な役割を果たします。これらの検査は、重症度の判定や治療方針の決定に役立ちます。

急性腰痛と慢性腰痛の違い

一般的に、発症してから数週間~3ヶ月以内に治まる腰痛を「急性腰痛」、3ヶ月以上痛みが続く場合を「慢性腰痛」と分類します。急性期と慢性期では治療アプローチが異なる場合があり、特に慢性腰痛は、痛みの管理や生活の質の向上を目指した、より長期的で多角的なアプローチが必要になることがあります。

整骨院での評価と治療アプローチ

整骨院では、問診や検査を通じて腰痛の原因を特定し、それに応じた施術を行います。

痛みの原因を探る評価プロセス

まず、患者さんの状態を正確に把握するための評価を行います。

詳細な問診(事故状況、症状の経過など)

いつ、どのような事故に遭ったのか、いつからどのような症状(痛みの場所、性質、強さ、しびれの有無など)が出ているのか、どのような時に痛みが強まるか、既往歴などを詳しくお伺いします。

身体検査(姿勢、動き、触診、整形外科テスト)

立った姿勢や歩き方、体の動かし方(前屈、後屈、回旋など)を観察します。次に、手で背骨や骨盤、筋肉の状態(圧痛点、硬さ、関節の動きなど)を丁寧に確認します(触診)。さらに、特定の動きや徒手検査(整形外科的テスト)を行い、痛みの原因となっている部位や組織を特定していきます。

整骨院で行われる主な治療

評価結果に基づき、様々な治療法を組み合わせて症状の改善を図ります。

手技療法(マッサージ、関節調整、矯正など)

整骨院治療の中心となるのが手技療法です。硬くなった筋肉をほぐして血行を改善するマッサージ、動きの悪くなった関節の可動域を広げる関節モビライゼーションやストレッチ、必要に応じて背骨や骨盤の歪みを整える穏やかな矯正(マニピュレーション)、患者さん自身の筋力を使って関節機能を改善する筋エネルギーテクニックなどが用いられます。

物理療法(温熱・冷却、電気療法、超音波など)

手技療法の効果を高める補助として、物理療法機器を使用します。患部を温めて血行を促進し痛みを和らげる温熱療法、炎症を抑える冷却療法、痛みの軽減や筋肉の弛緩を目的とした低周波・高周波などの電気刺激療法(TENSなど)、組織の修復を促進する超音波療法などがあります。

機能回復のためのリハビリと連携

痛みの軽減だけでなく、再発防止や機能回復のためのアプローチも行います。

運動療法(体幹強化、柔軟性向上、姿勢改善)

腰痛治療において運動療法は非常に重要です。腹筋や背筋など体幹の筋肉を強化して腰椎を安定させるトレーニング、腰周りや股関節の柔軟性を高めるストレッチ、正しい姿勢を維持するための指導など、個々の状態に合わせた運動プログラムが処方されます。

補完療法(鍼など)と医療機関への紹介

整骨院によっては、痛みの緩和や筋肉のバランス調整を目的として、鍼(はり)治療やドライニードリングなどの補完的な療法を提供している場合があります。また、評価の結果、骨折や重度のヘルニアなど、整骨院での対応範囲を超える疑いがある場合は、レントゲンやMRIなどの精密検査や専門的な治療のために、連携している病院や整形外科を紹介することもあります。治療計画は、個々の患者さんの状態や目標に合わせて、きめ細かく調整されます。

回復を早めるための自宅ケアと予防

整骨院での専門的な治療と並行して、自宅でのセルフケアや予防策を実践することが、腰痛からの早期回復と再発防止につながります。

痛み始めた時期の対処(急性期)

痛みが強い急性期には、無理をしないことが基本です。

安静と活動の適切なバランス

激しい痛みがある場合は、無理に動かず安静にすることが第一です。ただし、過度な安静はかえって筋肉を弱らせ、回復を遅らせる可能性もあるため、痛みが許容できる範囲で少しずつ体を動かすことが推奨されます。どの程度の安静・活動が良いかは、専門家の指示に従いましょう。

温める?冷やす?温冷療法の使い方

患部を温める(温熱療法)か冷やす(冷却療法)かは、時期や状態によって異なります。一般的に、炎症が強い急性期(受傷直後など)は冷却が、痛みが落ち着いてきた慢性期は温熱が効果的とされますが、自己判断せず、整骨院の施術者から具体的な指示を受けて適切に行いましょう。

日常生活で腰を守る工夫

日々の生活の中で、腰への負担を減らす意識が大切です。

正しい姿勢を意識する(座る、立つ)

座るときは深く腰掛け、背筋を伸ばし、必要であれば腰にクッションなどを当てましょう。長時間同じ姿勢でいることを避け、こまめに休憩を取り、軽いストレッチをするのが理想です。立つときも、猫背や反り腰にならないよう、お腹に軽く力を入れて背筋を伸ばすことを意識します。

腰に負担をかけない物の持ち上げ方

床にある物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、対象物を体に近づけてから持ち上げます。持ち上げる際に体をひねる動作は腰に大きな負担がかかるため避けましょう。

回復をサポートするセルフケア

日々の小さな積み重ねが、回復を後押しします。

指導されたストレッチや運動の実践

整骨院で指導されたストレッチや体幹トレーニングなどの運動は、痛みのない範囲で継続的に行いましょう。これにより、柔軟性の維持・向上、筋力強化、血行促進などが期待できます。無理は禁物です。

栄養バランス、水分補給、良質な睡眠

筋肉や組織の修復には、タンパク質をはじめとする栄養バランスの取れた食事が重要です。また、十分な水分補給は血行促進にもつながります。質の高い睡眠は、体の回復力を高めるために不可欠です。体に合ったマットレスや枕を選ぶことも有効です。

ストレス管理と予防のための低負荷運動

精神的なストレスは痛みを増強させることがあります。自分に合ったリラクゼーション法を見つけて、ストレスを溜めないようにしましょう。痛みが落ち着いてきたら、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの低負荷な有酸素運動を習慣にすることは、筋力維持や体重管理、血行促進に役立ち、腰痛の再発予防につながります。

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